79.例えばこんな愛し方













「別れよっか?」




テレビを見ててつまらくなって、なんだかこう・・・そうそういう気分で。
なんとなく口走る。
「えっ」

・・・・

沈黙、しんとする部屋。
まるで凍ったようで世界が引っくり返る。あら、なんて新鮮な空気。

ちらりと
困ったようで泣きそうな顔をじっと見つめる。
何も言わないのか
何も言えないのか
黙ったまま


弱い眉毛がますます垂れ下がって
もともと不幸そうな見た目に拍車がかかってる。

・・・・
続く沈黙


テレビの中では司会の芸人が飛ばしたらしいギャグが面白かったらしく
コメントがでっかくテロップで流され、みんな大爆笑してる。
ああ、やっぱり滑稽だわ。こんなもの。
最近コメントとか、でっかくテロップに出すのかな。
テレビって情報が無尽蔵でそっから出てくる中のどれにヒットする
なんて自分で決めさせて欲しいのに、押し付けがましくてちょっとイヤ。

・・・・・・
この空気も飽きちゃった

つまんないので
再度、隣に座っているうなだれた感のある人物を観察。

・・・・・

じーっと見ていたら下を向いてしまった。
顔が見えないよ。



5、4、3

あと3秒で泣き出しそう。

2、1・・
「なんちゃって」
ぼそっと呟いてみると跳ねたように上がった横顔
衝動的に頬に軽くキスをし、立ち上がる。

「お茶でも飲むか〜い?」
そのままキッチンに私は向かう。
顔を見られなければおおむね誤魔化すことはできる、と思う。
だってシャイなんだもの。私日本人だし。
似合わないことをするというのはとてつもなく恥ずかしい。
ちょっと嬉しいけど。




ばたっ

後ろでソファーに突っ伏す音が聞こえる。
緑茶より、ほうじ茶かな?
なんてことを考えつつ、鼻歌混じりに戸棚を開ける。


「何が楽しいんだ・・・」
遠くで涙声が聞こえる。
口の端が上がるのを押さえられない。




いとおしい。

いじめたい。

あいらしい。

がぐるぐるしてる、こんな日々。











サディスティックな人のほのぼの?とした日常と愛情表現。
いじめるのはいじらしい→かわいらしいと思うから。迷惑な。