パラノイア (深谷充の場合。)






・・・・いやだ。

あの視線が嫌だ。

ずっと見られる苦痛。

うんざり、重過ぎる。ああ、いやだ、思い出す。

苦しい。あの視線、泣きながらすがる女。

俺を愛してるって泣き叫ぶ

いいから触るな、腹が立つんだ

「ワタシがこんなに愛してるのに!」

はいはい。ウザイってば

アンタが愛しているのは自分だけだ、そうだろう?

ああ、触るな、生温くて甘ったるいお前の匂いが気持ち悪い。







でも、まさか刺されるとはな





ズプッ

背中に刺さった刃を抜き去る

噴き出る飛沫。マジっすか








最初は好みだと思ったのに。気がつかなければ良かったのだろうか

まあ、美人だったし。言い寄られて悪い気もするはずがなく・・・











声が色っぽいと思った

プルトップを開けるときの指が好きだった。

うなじとか、細い髪、柔らかい肌

ははははははははは

笑える。今では抱くのも億劫だ





この歳でもう女に飽きたのかよ、俺。・・・ちょっと違うな。飽きたんじゃない。苦しいんだ。







あの女からは忘れた過去が見え隠れする

それに気がついたとき俺は復讐をはじめてしまった。









いや、過去に復讐されてるのは俺のほうか・・・

縛られている

抜け出せない。愛という名の独占欲の檻に監禁されているのは俺の方

うんざり





携帯の着信履歴がびっしり埋まる

鬱陶しい、というか気味が悪い、正直

最初はこーいう女って結構いるしな、程度だった







プルルルルルルル・・・・

「おい、携帯なってるって」

プルルルルルルル・・・・

「あーいいや。運転中だし」

友人の言葉に適当に応対する

プルルルルルルルル・・

「また鳴ってるよ、すげえな。あ、切れた」「だろ?疲れるっての」



プルルルルルルルルルルル・・・

「げ」

「うっわ、ヒデェ奴。百合ちゃん美人じゃん」

「顔と体は問題ないんだけどなー」

「あはははっ、お前サイテー」



笑い事じゃなく最低だろうな

一回抱いたらだんだん嫌になってきた

流石にこれを言ったらこいつにも嫌われるか、俺?







「そういえば一志、俺マコちゃんに手え出してるって疑われてんだよ」

「おい?お前うちのマコに」

「違うってー、コイツが勝手に言ってんの」

携帯をあごで示す
「ならいいけど。まあ、お前の付き合うタイプじゃないだろうが」と前置きして

「手出すなよ」

あらら。マジだね、流石おにーちゃん。平気。好みじゃねえってば。可愛いけど。


















夢を見た。


俺が殴られてる。


俺が怪我をする。


「ごめんねぇ、充ちゃんごめんねぇ、何でこんなことしちゃうの私」


「充ちゃん愛してるのよ、ごめんねぇ」







ウソツキ

クルシイ、ジンジャウヨ

イタイ、イタイ、イタイ・・・

ボクニクレルノハアイジャナククツウダケ・・・


















それが愛なら欲しくない。











サイレン・・?

誰かが近寄ってくる。俺を母さんから引き離す。違う百合?

どっちでもいい、触るな

「やだぁ、触らないで!私の、私のなんだから・・」

はははははは

誰がお前のものだよ

神様お願いです、あと一言だけ







「俺、お前嫌いなんだって・・」







ズルリと女が落ちた。





そして世界は真っ暗になる。
















ずっと引越し作業忘れてました・・・。


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