第五話 神聖なる魔法と不純な人間  


「思ったより深そうだね」
おかわりの紅茶を淹れながら、神父はさほど深刻そうでもなく告げる。
「ちゃんと治療した方がいいね」
それを聞いてオデオンは苦虫を噛み潰したような表情でうめいた。
「・・・魔物ニ情ケヲ掛けるトは悪趣味ダな」
「情けなんて・・・悪趣味は否定できないかな?」
苦笑と合わせて返事をする。
???マークを顔面にのせたオデオンは首を捻る。
「じゃあ、片付けたら治療しようか」
そういうとさも楽しそうに笑った。


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---教会奥の二階。

赤い背中に青紫が刻まれている。見るからに痛々しい。
神父はそっと露わになった背中に手を触れる。
「・・・」
小さく呟くとその手に光が収束して集まってきた。
何の前触れも無く、傷が癒される。
「・・・・やはり、か」
じっと背中を見つめる。傷は跡形もなく消え去っていた。元通りの赤い背中。
先程と同じように背中に触れてみるがもう、痛みも無いようだ。
ぷにぷに。
適当に背中を指で押してみる。
「マダか?痛ミはもう・・」
「まだだよ」
声だけは神妙そうに、肩甲骨などをじーっとみつめる。
ぷにぷに。
結構肉がついてるんだなあ、なんて思っているとはオデオンは知る由もなく・・・
そのまま、五分ほど経過。

「・・・・・・・・おイ、もう終わってイルのだろう・・・?」
「あらら、バレた」
依然背中を触ったままの神父。
両手をわななかせてうめく声が響く。肩はぶるぶると震えていた。
ひゅんっ
飛んできた裏拳をひょいっとかわし
「はい、終わったよー」
全く悪びれもせずに切り返す。くるりと身を翻したったと扉の方まで走っていく。
「一応もう少し安静にね」
振り向かずに届いた科白を、投げ返す。
「ウルサイッ!!」

ぼむっと神父の消えた扉に枕が投げつけられ、ふわりと部屋に鳥の羽根が舞った。




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