第八話 到着   




???
オデオンは困惑していた。
「出鱈目ナ事バカリだな・・」
苦々しく呟く。嘘か本当かオデオンにはとてもじゃないが判断がつかない。
神父の瞳はどこまでも真っ直ぐにオデオンを捉えていた。
彼女にとってその視線も居心地が悪く感じている。だからといって
逃げ出せだせもせず、とりあえず頭を抱える。


「ごめん」
ふっと息を吐き出す。ちょっと笑いながら。椅子の背もたれに体重を預けつぶやく。
「何を言ってるんだろうね、わたしは」
にっこりと笑った。どちらかといえば意図的に。
オデオンは何の言葉も返しようがなかった。
「・・・・・・・」
「ごめんね。訳がわからないだろう?でも、嘘はついていないんだよ」
柔らかい金髪をかきあげながら分かりやすくそれでいて、気の利いた言葉を適当に捜す。
(結構見つからないもんだね)

そうこう考えているうちにオデオン声をあげた。
「逃ゲてもイイ・・それは本当カ?」
「そうだね、勿論だよ」
「傷は・・・治っタ。でも治したのはお前ダろう。こんなに深い傷は泉でも治ラない」
「泉?」
「聖域の泉ダ。我等ヲ癒してクれる。神がおわすのダ」
「へぇ」
(神の奇跡、やはり魔境にも存在するのか)
ふむと考え込む。

魔境は全くの未開の地であり、オデオンの情報はかなり目新しいものだった。
学者肌の神父は興味津々といった風に話に聞き入る。
「オデオンは聖域ヲ守らねバならない、負傷しテ帰れバただの役立たずダ」
「じゃあ取引を受けてくれるってことかな?」
こくんと頷く。
「ありがとう。必ず魔境に帰してあげるよ」
今度はごく自然に笑顔が出た。カタンと椅子から立ち上がりオデオンの真正面に立つ。
「こんな事に付き合わせてごめんよ」
ぽんぽんと軽く頭を撫で付ける。どちらかと言えば肩にに触れようと思ったのだが
なんとなくやめておいた。予感がしたのだ。
--刹那。

バタン!!
聖堂の扉が開いた。そこには誰も居ない。いや入り口にベタンと腰を下ろした男がいた。
見るからに疲れきったという風情である。

「ごくろうさま〜」
瀕死の男にのん気な神父の声が届いた。


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