???
オデオンは困惑していた。
「出鱈目ナ事バカリだな・・」
苦々しく呟く。嘘か本当かオデオンにはとてもじゃないが判断がつかない。
神父の瞳はどこまでも真っ直ぐにオデオンを捉えていた。
彼女にとってその視線も居心地が悪く感じている。だからといって
逃げ出せだせもせず、とりあえず頭を抱える。
「ごめん」
ふっと息を吐き出す。ちょっと笑いながら。椅子の背もたれに体重を預けつぶやく。
「何を言ってるんだろうね、わたしは」
にっこりと笑った。どちらかといえば意図的に。
オデオンは何の言葉も返しようがなかった。
「・・・・・・・」
「ごめんね。訳がわからないだろう?でも、嘘はついていないんだよ」
柔らかい金髪をかきあげながら分かりやすくそれでいて、気の利いた言葉を適当に捜す。
(結構見つからないもんだね)
そうこう考えているうちにオデオン声をあげた。
「逃ゲてもイイ・・それは本当カ?」
「そうだね、勿論だよ」
「傷は・・・治っタ。でも治したのはお前ダろう。こんなに深い傷は泉でも治ラない」
「泉?」
「聖域の泉ダ。我等ヲ癒してクれる。神がおわすのダ」
「へぇ」
(神の奇跡、やはり魔境にも存在するのか)
ふむと考え込む。
魔境は全くの未開の地であり、オデオンの情報はかなり目新しいものだった。
学者肌の神父は興味津々といった風に話に聞き入る。
「オデオンは聖域ヲ守らねバならない、負傷しテ帰れバただの役立たずダ」
「じゃあ取引を受けてくれるってことかな?」
こくんと頷く。
「ありがとう。必ず魔境に帰してあげるよ」
今度はごく自然に笑顔が出た。カタンと椅子から立ち上がりオデオンの真正面に立つ。
「こんな事に付き合わせてごめんよ」
ぽんぽんと軽く頭を撫で付ける。どちらかと言えば肩にに触れようと思ったのだが
なんとなくやめておいた。予感がしたのだ。
--刹那。
バタン!!
聖堂の扉が開いた。そこには誰も居ない。いや入り口にベタンと腰を下ろした男がいた。
見るからに疲れきったという風情である。
「ごくろうさま〜」
瀕死の男にのん気な神父の声が届いた。
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